パーカッション溶接という溶接方法がある。
コンデンサを利用した溶接システムである。
通常の抵抗溶接はコンデンサに貯めたエネルギーを溶接トランスで大電流に変換する。
その変換した電流をしっかり押さえ込んで漏れなく通電する事で発熱させて溶接する方法とすると、パーカッション溶接はコンデンサの+-にワークをつけて、高電圧のまま接触させる。そのときに発生するアークとスパークを利用して接合させる方法である。
一般の抵抗溶接でも加圧をしっかり取らずに通電時に急激に抵抗値が下がったりするとスパークが起きる。
このときに普段溶接が困難な銅やアルミが強固に接合される事がある。
しかし、失敗により偶然できた溶接なので2度同じような接合をする事は難しい。
いや、不可能とも言えるように思う。
この不可能に再現性を持たせようとする溶接システムがパーカッション溶接と言っても良いように感じる。
抵抗溶接は電流値、加圧力、追従性、通電時間の要素で専用の溶接ヘッドなどを使用した場合に条件が出たならば、再現性はかなり高い。
パーカッションの場合はコンデンサの電圧、接触速度、接触後の通電時間のコントロール、 接触圧(動的)などである。
抵抗溶接が静(加圧)→動(溶接ヘッドの追従)→静(溶接完了)という動きに対して、 パーカッション溶接は動(ワーク発射)→静(ワーク接触)→動(ワーク溶け込み)→静(溶接完了)という流れになる。
ぶつかって溶接されるために、押さえ込んで安定した状態で通電する抵抗溶接に比べて、 動的状態から始まるパーカッション溶接ではぶつかったときの状態を機構部で再現しなければならないので、かなりの精度が必要になる。

この難しい溶接方法で今も製品が作られている。
切り出したワークをぶつけて溶接できるならば、時間的にはスピーディーにはなるし、メリットも多い。 しかし、安定という意味ではなかなか大変のように思う。
小難しい事をいろいろ書いてみたが、私どものような抵抗溶接の世界からみて失敗と思われる通電を利用して溶接する世界がある。

なんと頼もしくないだろうか?

一般的なことなら廃棄や無駄と思われる方法を実とするシステム。
この先も生まれてくるはずである。
あきらめなければ難しい方法もクリアできるはず。

自動車産業のガソリンからの脱却もこんな無理難題からスタートするのだと思うが、世界のエネルギー問題も含めてどんなシステムを人類が考えるのか興味がそそられる。

※弊社でもパーカッション溶接の溶接電源部のみの提供はさせてもらった実績はあります。