インバーター式のロウ付け装置について解説します。
ロウ付の重要なポイントにロウの濡れ具合があります。
この濡れ具合がロウ付け製品の良し悪しを決めることになります。
接合物(ワーク)とロウの温度をほぼ同じにすることで、よりロウが濡れて「より強く」「より美しい」仕上がりになると言われいわれています。
ロウだけ溶かしても良い接合にはならないのです。
その温度管理・温度調節が良いロウ付けを行うツボだと思われます。
ロウの溶け具合を確認しながら加熱時間を決定していく作業が大きなポイントです。
抵抗ロウ付けの良い点は加熱時間などのコントロールを一度決定すると、 何度も同じ状態でロウを溶かすことができるため、量産加工などの均一製品の確保には良い加工法であると言っていいと思います。
抵抗ロウ付けの場合、ロウが溶けてくるとワークとロウの接触抵抗が変化して電流が流れやすくなり、同じ電流を流しても発熱しにくくなります。
そのため、段階的に電流値を上げて行くことで、ロウの発熱状態を保ち、良い濡れ具合になるまでロウの温度を下げないようにすることが重要になってくるのです。
※当社のインバータ式ロウ付け装置は8段階の通電コントロールが可能です。
従来の交流溶接装置で発熱させた場合は一般的にコントロールのポイントはサイクル数(通電時間)とパワー(位相制御)でコントロールすることになります。
もうひとつはトランスタップにより二次電圧を変化させることです。
交流式は安価な装置なので多く利用されています。
しかし、近年シビアなロウのコントロールを要求されることから、インバータ式の抵抗ロウ付け装置のニーズが高まってきているのです。
その理由を下記で解説したいと思います。
抵抗ロウ付け装置の通電コントロール
ワークにロウをはさみ、加圧して通電させると、ワークとロウの間の接触抵抗で抵抗発熱してロウが溶け始めます。
ロウが溶け始めると接触抵抗が少なくなり、通電が楽になると発熱が減ります。
そこで、段階的に電流値を上げることで、発熱状態を保ち、ロウを溶かしていきます。
ワーク・電極も発熱することで、金属の固有抵抗が増してきます。このことで発熱に影響があり、電流値を上げる必要がでてくるのです。
この要素をうまくコントロールできる溶接電源がより良くワークにロウが浸透する状態(濡れた状態)の接合が可能となるのです。
何故インバーター式がすぐれているのか?
一般的な交流溶接電源の場合は段階コントロールは位相と通電サイクル(時間)のみで、タップの変更は自動制御できないものが大多数です。
そのため、あらかじめ少なめの状態からコントロールを始めなければならないのです。
そうすることで、下図のように通電間に大きな空白の時間ができてしまいます。
例えば、3段階で通電する場合にピークを80%とすると、20%→50%→80%と段階通電させ、それに見合ったトランスタップを決定しておく必要があります。
【第1通電 20%】
【第2通電 50%】
【第3通電 80%】
第1通電では1サイクル約20msecなので、空白の時間が8msecとなってしまいます。
第2通電では5msec・第3通電では2msecの休み時間が出来てしまいます。
インバータ式で3段階通電させた場合は下記図のようになります。
休み時間は無いに等しいと考えてください。
【第1通電】
【第2通電】
【第3通電】
電流値・通電時間をスペック内で自由にコントロールできるので、セッティングもしやすく、休み時間も無いに等しいことから、ロウをスムーズに溶かし、良い濡れが起こるまで温度キープすることも出来ます。
波形図の比較よりインバータ式は効率よく熱を掛けられることから、ロウ付けのセッティングをみつけやすいのです。
まとめ
マイクロ電子の提供するインバータ式ロウ付け装置は合計8段階の通電コントロールが可能であり、 シビアなコントロールに対応できるため従来の交流式に比べて、より良いロウ付けの条件を、より早く見つけ出すことが出来るのです。
しかし、まだ温度管理できるまで行っておらず、使用者(技術者)の経験がロウ付け技術のほとんど占めています。
この装置は車で言えば大パワーのスポーツカーです。
乗り手の運転能力でその性能を引き出すことが出来るのです。
コントロールしやすい装置であることは確かですので、インバータ電源・8段階通電の性能をフルに活用してより良いロウ付け製品を作っていただければと思っています。
※製品案内のインバータ式精密抵抗ロー付装置(2ch)OMTH-26V4S-2CHも参考にしてください。
内容で不明な点などあればご連絡いただければと思います。